大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)997号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

以上のとおり控訴人が被控訴人に対し、往路昭和五一年七月二六日東京発・復路同年八月二二日サンフランシスコ発の東京・サンフランシスコ間団体往復八六名分の航空券の入手方(航空会社と交渉して運送契約を成立させるか、または既に航空会社と運送契約をしている他の業者と交渉してこれを譲り受けること)を依頼し、被控訴人が右趣旨に従つてその入手のための事実行為及び法律行為をすることを承諾したこと、及びその目標がパンアメリカン航空のものに置かれその場合価格を一名分一二万円とすることが予め合意されていたこと、が認められるが、それ以上に、被控訴人が控訴人に対し、パンアメリカン航空の団体往復航空券八六名分を一名分一二万円で無条件に入手させることを確約したり、それが既に確保された旨を通知した事実を認むべき証拠はない。

控訴人は、被控訴人が控訴人から徴した前納金一七二万円は、控訴人に右パンアメリカン航空の航空券を入手させるべきことを確約し、違約した場合には損害賠償の責に任ずることを明らかにするものとして授受された、と主張する。

しかし、<証拠>によると、旅行業者が顧客から航空券の入手を依頼された場合にデポジットとよばれる前納金を徴することがあるが、それは主として依頼を受けた旅行業者が航空会社に対する関係で、確保した座席が顧客側の一方的な都合で解約されることの不都合を防ぐため、顧客の解約の自由を拘束する意味をもつものであること、もつともその授受は、旅行業者に対しても、依頼された航空券(もしそれが入手できない場合には依頼の趣旨に最も近い航空券)を入手するため誠実に努力し、もし入手したときはこれを依頼者に引渡す本来の義務を更に強め、他に有利な条件を提示する顧客が現れた場合でもデポジットを入れた顧客との取引を優先させるよう拘束するものであること、そればかりでなく、デポジットは旅行業者が航空会社等と交渉して座席を確保した段階で要求するのが普通であるところから、授受が行われたのちに至つて予定された航空券が入手できない事態を生ずることは殆んどなく、その意味では、実際上はデポジットを入れれば通常航空券が確保されたといつていい関係にあること、しかしながら更に進んで、旅行業者は航空券を確保したのちでなければデポジットを徴してはならないとか、これを収受すれば以後依頼された航空券の入手引渡につき一切の抗弁権を失うなどといつたことが旅行業界の慣行ないし法確信として確立しているわけではないこと、が認められる。

控訴人が被控訴人に交付した一七二万円の前納金については、その交付した趣旨や交付するに至つた経過は前認定のとおりであつて、授受の際被控訴人は控訴人にパンアメリカン航空の航空券が完全に確保されていないことを明示し、確保のため努力すべきことを約束したにすぎないものであるから、右前納金の授受自体をその入手の保障ないし確約とみることはできない。

(杉田洋一 蓑田速夫 松岡登)

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